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2024年08月13日号 (第513)
路線価より土地の売買価格が低い場合
みなさん、こんにちは。東京オリンピックの時は家に帰ると試合が終了していて、一度も生中継を見ることができませんでした。今年のパリオリンピックは、家に帰ると生中継の最中でなかなか眠れません。開催地でない方が見やすい側面もあるのですね。
さて今回は、路線価より土地の売買価格が低い場合の取扱いです。
路線価の全国平均は3年連続で上昇
7月1日に令和6年の路線価が公表されました。対前年比は全国平均で2.3%上昇となっており、全国平均としては3年連続で上昇しています。東京都は、前年対比で路線価が5.3%上昇しています。ただし、全国的に路線価が上昇しているわけではなく、16県では路線価が下落しています。
路線価と実勢価格と公示価格
路線価は、相続税や贈与税の計算を行う際に用いる価額として、国税庁が公表しています。実勢価格は、実際に取引が行われた価格です。公示価格は、国土交通省が1月1日時点の標準地について鑑定評価した土地の価格です。ちなみに、国税庁が日本全国すべての地域に路線価を付しているわけではなく、路線価が存在しない地域では、固定資産税の評価額に一定の倍率を乗じて評価するための倍率を指定しています。
実勢価格は近隣の土地の取引が行われなければ価格が存在しませんし、公示価格は特定の地点の価格として公表されますが、すべての住所の価格が公表されているわけではありません。結局、特定の地点の土地の評価を行う場合、国税庁の路線価、あるいは倍率表を用いることになります。一般的に、路線価は公示価格の80%程度となっていると言われています。また、固定資産税の評価額は固定資産税を課税するための評価額で、3年に1度、公示価格の70%程度の金額で、自治体が評価額を算定しています。
路線価より売買価額が安い場合
一般的に、路線価は公示価格80%程度ですから、路線価よりは高く売れると想像してしまいます。ところが実際に土地を売りに出すと、路線価より低い価額でしか売れないケースがあります。
相続税の計算では、土地は路線価によって評価して、税額を納付します。相続直後に土地を売却し、その土地が路線価より低い金額でしか売却できなかった場合、売却価額に基づいて相続税の計算をし直せば還付が認められるかという問題があります。国税不服審判所で争われた事例がいくつかありますが、結論として路線価による評価が尊重され、売却価額に基づく更正の請求は認められないようです。
路線価は更地としての評価であり、実際には中古建物が建っている場合は、解体費用が控除された金額で取引価格が決まる場合もあります。また、時間をかけることができれば路線価以上で売却できる場合でも、売り急げば路線価より低い価格になってしまうケースもあります。
国税不服審判所の考え方は、実際の売買価格は個別の事情が織り込まれているので、土地そのものに特別の事情が存在しない限りは、路線価を優先するという考え方です。
現在、土地の価額は全体的に上昇傾向が続いていますが、土地の金額が下落傾向の場合には、売却価額が路線価を下回る傾向になるケースもあります。土地の下落傾向の状況下では、相続前に売却してしまうのも一つの相続税対策となります。
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